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企業がCO2排出量を算定する目的とは(第2回)

「CO2の算定した後は?」

今春開催された、脱炭素をテーマにした展示会に説明員として参加していたときに、何度となく頂いたお悩みごとをきっかけに、前回では、算定の目的についてお話ししました。今回は、多大なコストと労力をかけて行った算定を、それで終わらせてしまってはもったいない。算定結果を含む「非財務情報」を積極的に開示することを通じて、ステークホルダーとコミュニケーションを図ってほしい、というお話をしたいと思います。

 例えば、TCFD提言に基づいた開示や、CDP質問書への回答により、機関投資家は企業の将来に亘る事業継続性を検討できます。財務情報と比較し、非財務情報は信頼性の高い情報が得られないという現状があることから、好適に受け取られることでしょう。

なお、TCFDはISSBへ正式に引き継がれ、その開示ルール「IFRS S1・S2」が2023年6月26日に正式にリリースされています。

Supporting materials for IFRS Sustainability Disclosure Standards
https://www.ifrs.org/supporting-implementation/supporting-materials-for-ifrs-sustainability-disclosure-standards/#ifrs-s1-general-requirements-for-disclosure-of-sustainability-related-financial-information

加えて、東京証券取引所は2022年4月4日から、プライム・スタンダード・グロースという3つの市場区分に再編され、プライム上場基準には、見直されたコーポレートガバナンス・コードが盛りこまれました。
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図 1 プライム市場上場基準

 そのコーポレートガバナンス・コードには、「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく情報開示」が明記されていることから、プライム市場上場企業にとっては、上場が維持できるという目に見えるメリットがあることになります。

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図 2 改訂コーポレートガバナンス・コード

 さらに、金融庁は、将来的には、有価証券報告書の記載項目に「サスティナビリティに関する考え方及び取組」を新設することを検討するとしています。これが現実のものとなれば、もうボランタリーな開示、任意開示ではなく、法定開示になります。法的義務を果たすだけでなく、いち早く対応していれば、必ず評価されるでしょう。

 ウェブサイトや統合報告書など、様々な媒体で環境に対する姿勢を積極的にPRすれば、環境ブランディング構築にも寄与します。お客様の信頼を勝ち取ることも可能でしょう。

 これらのベネフィットが経営陣に共有されれば、単年度で終わらせるという選択肢は無いものと考えます。この業務を担う部門は、もはや、コストセンターではなくプロフィットセンターなのです。

 なお、サステナビリティ情報の開示に当たっては、ルールが乱立し、いわゆる「アルファベットスープ」という状態に陥っていました。

 しかしながら、各規格・基準を運営している機関・団体・イニシアチブも「持続可能な社会の実現」というビジョンは共通であり、「ダブルスタンダード」「ダブルディスクロージャー」は避けるべきという問題意識は共有していました。

 そこで、現在では、完全に統一するまでには至らなくとも、開示の際の負荷を低減すべく、「相互運用性(Interoperability)」を高め、「用語・分類方法(Taxonomy)」を共通化するプロジェクトを推進しています。

 開示ルールには、ボランタリーなものと、法規制に基づくものとがあり、中々一筋縄ではいかないようですが、待つ必要はありません。

「情報開示」はコミュニケーションツール
明確なルールが無いからこそ、ステークホルダーの期待値を超える開示を行い、いち早く自社のポジションを築き上げましましょう。

Permanent Planet株式会社
兼 園田電気管理事務所
園田隆克