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系統連系の手続きに関して(第2回)

 このブログシリーズでは、第1回目の系統接続に続き第2回は再エネの出力制御の影響で売電できない事象について説明し発電者側で発生する費用や機会損失を理解することが目的です。

出力制御には、大きく分けて2種類あります。
1. 需要が発電量を下回るため再エネの出力を抑制するもの(一般的に、出力制御といわれるもの)
2. 送配電設備に流すことができない容量の発電量が発生しないために再エネの出力を抑制するもの。(N-1電制、ノンファーム)

  1. の出力制御について
     電力の仕組みとして瞬間単位でも常に発電量と送電ロスなどを含め需要量が一致しなければ電力系統は破綻し、広域停電(ブラックアウト)を起こします。再エネを増やすために導入された固定価格買取制度(FIT制度)が始まる前は、水力などの一部を除き電力会社が需要の予測を行い発電量と需要量が完全に一致するように制御しておりました。
    FIT制度が始まり、多量に誰も制御していない太陽光発電や風力発電が急激に増え、太陽光発電などの発電量が需要量を超過することが2014年頃から予見できるようになってきました。
     このため、発電設備の導入を止めるか、発電量を必要なときだけ止めるかの二択となり後者選択されました。出力制御を導入しない場合は、新規の再エネの導入ができなくなるからです。

    経済産業省 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/grid/08_syuturyokuseigyo.html

     出力制御されるコマについては、基本的に市場での取引き価格は、0.1円となります。ただし、FITについては固定買い取りとなっているので出力制御で抑制されない限り影響はありません。
     出力制御の実施見込み、実施結果は全て各送配電のホームページで公開されておりますが、個別の発電所の実績についての公表は原則行われません。ただし、送配によっては個別の発電所の実績を確認できるサイトがありますが、こちらは例外となります。確認できるサイトがあると便利なのですが、システムを作成し運用するには資金が必要となり、その資金は全て託送料へ跳ね返るので個別の発電所の抑制結果を確認するサイトの作成は不要と整理されております。現状、個別の発電所の出力制御実績を確認できる送配電は、不要の整理前に作成された物となりますので、今後増える見込みは少ないかと思います。
  2. の出力制御について
     こちらを行う理由は、1の出力制御と同じですが、対象が設備(送電線や変圧器)となります。設備には、定格容量がありこの容量を大きく超えて電気を流すと設備の破損、送電線が垂れ下がるなどします。そのために、2の出力制御が始まる前は、定格容量が超えることが予見されるときには、送電線等の増強が必要となり、工事費や工期が発電設備の規模と釣り合わない回答が多くなるようになりました。工費の問題を解決するのが募集プロセスであり、募集プロセスの検討期間を短くした物が一括検討プロセスとなりました。ただし、この2種類のプロセスでも工期の問題は解決できません。
     そのために、容量が超過したら即停止させるN-1電制と超過するときに出力を抑制させるノンファームが導入されました。また、ノンファームの適用範囲を拡大させたローカルノンファームも2023年4月から受け付けが開始されました。

    2-1. N-1電制
     適用範囲は、主に特高の2回線(鉄塔の両脇に電線があるもの)を使用している箇所になります。日本の場合、2回線電線があっても事故等で送電が止まらないように1回線分の容量しか使用しておりません。事故が起きたときだけ、1回線で数分だけ流せる容量まで拡大し、事故等で1回線になり定格容量(何時間も流しても設備に影響を与えない容量)を超過する前に通信回線を通じて止める設備です。
     基本的に、事故が起きた上に容量が超過している時だけなので抑制される可能性はかなり低いです。
    https://www.occto.or.jp/access/oshirase/2018/181001_n-1densei_shiryou.html

    2-2.ノンファーム
     こちらは、設備の定格容量を超過することが見込まれる場合に出力が抑制されます。仕組みは、1の制御と同じ物を使用しており、送配電側の設備・計測等が導入されれば、1の出力制御の仕組みを導入していれば発電所(PCS側)の対応は不要です。
    傾向としては、1の出力制御が起きる時に当該の送電設備が抑制される可能性が高いです。場所によっては、出力制御より頻繁に抑制される可能性があります。理由としては、需要が少ない地域に多量の再エネ設備が連系されている場合は、出力制御がかからなくても設備容量が超過する場合に抑制されます。ただし、連系状況、負荷の状況については各々設備により変わってくるため一概に1の出力制御よりノンファームの方が上回るとは言い切れません。
    ノンファームについて(電力広域的運営推進機関の資料)
    https://www.occto.or.jp/grid/business/documents/nf-dengen.pdf
    ローカルノンファームについて(電力広域的運営推進機関の資料)
    https://www.occto.or.jp/iinkai/kouikikeitouseibi/2022/files/seibi_62_02_01.pdf

  3.  今後の見込み
     出力制御、ノンファームとも出力制御される日は年々増加していきます。出力制御、ノンファームとも先行した発電所が優遇される処置はなく、後から導入された再エネ分も含めて制御されます。現状、年々発電設備が増えているため、出力制御、ノンファームとも発動される量は増加します。そのため、10年後等の発電量を正確に予測るのは現状かなり難しい状況となっており、想定より出力制御が増えると収益の悪化につながります。
     なお、ノンファームは、上記のとおりに対象となると徐々に出力制御される可能性が高くなります。そのため、ローカルノンファームが開始されると対象設備が徐々に増加していくことが予見されるため、なるべく対象となる設備が少ないなるように早めに申込をすることが重要となります。
  4. 回避の方法
     基本的に出力制御、ノンファームともに発電者側で対応するとなると蓄電池等を導入して出力制御される発電量を夜等に遷移させる方法ぐらいしかありません。とくに、1の出力制御に関しては、需要とのバランスとなりますので、昼間の需要を増やすことは、発電事業者での対応は難しい状況です。
     ただ、国としてもこの現状に問題意識を持っており、昼間に安価になる電力料金プランの導入を小売電気事業者へ求める、出力制御時に託送料金が安くなるプランを送配電が導入するなど、少しずつ昼間の需要を増やす努力は続けられております。ただし、太陽光や風力の増加ペースや、省エネ化の推進による需要の減少のペースの方が早いため抑制が減るということはなかなか難しいと推測しております。

デジタルグリッド株式会社
Controller team 
電気主任技術者
井上 拓也