コラム一覧へ戻る

脱炭素を巡る動向と環境価値の活用について(第1回)

 今回から、脱炭素を巡る動向、脱炭素の手法として特に再エネを使うこと、その一つとしてFIT非化石証書の活用について、2回に渡って述べてまいります。

 

金融機関もESGの取組に注目している

 読者の皆さまもご存じのことと思いますが、2006年に国連が責任投資原則(PRI)を提唱しました。こちらは持続的な成長を望むためには企業の事業活動にESGの視点を組み込むことが重要になるとの考え方に基づくもので、現在では世界共通のガイドライン的な位置づけとなっています。日本においては国もCO2削減、カーボンニュートラル、再エネを後押ししていることもあり、ESGの対する取り組みをしている企業に投資する動きに賛同する金融機関が増えています。下図からも、金融機関の資産残高が赤い線のとおり増加していっていることがわかります。

図_第1回_01
 従来は欧米が主体でしたが、日本でも次第に動きが盛んになってきており、環境に対する取り組みをしないと融資が減る、投資が受けにくくなる、という状況になってきていると思われます。

CO2削減のスキームに注目が集まっている

 このような動きを受け、環境、再エネ、CO2削減に対して賛同するスキームができはじめています。下図は、TCFD,SBT,RE100全てに取り組んでいる企業を環境省が取りまとめた資料です。この中の主要なスキームを示します。
 最も有名なのはRE100(Renewable Energy 100)で、自社で使う電源を再エネだけで賄うことを宣言し、それを実行していく企業が参加する団体です。日本企業は現状62社参加しており、世界で2番目に多いです。RE100は主にグローバル企業が参加していますが、より取り組みやすくするために、日本版RE100として、中小企業なども参加できるRE Actionも進んでいます。
 次にSBT(Science Based Targets)が挙げられます。2021年のCOP26では、パリ協定で定めた温暖化防止の世界目標を、産業革命後からの気温上昇を1.5度以内に抑えるよう、目標が見直されました。SBTは、この目標を民間企業においても追及達成すべく、CO2削減目標を定め、実際に減らすことを宣言することを支援する枠組みです。参加企業数は、日本は世界3位という状況です。
 最後にTCFD(Taskforce on Climate related Financial Disclosure)をご紹介します。TCFDでは、プライム市場の企業に対し、気候変動の影響の分析、計画立案、マネジメント体制構築といった内容を、投資家に説明していくことを求める枠組みです。TCFD賛同企業数は、日本は世界1位です。
 以上のように、大企業を中心として、このような再エネ推進やCO2削減の枠組みに参加する日本企業も増えてきています。

 図_第1回_02
サプライチェーンが協力して脱炭素を進めていかなければならない
 特に製造業において、自社のCO2削減は、GHG(Greenhouse GAS) Protocolと呼ばれるCO2排出量算定の標準フレームワークにおける、燃料の燃焼(SCOPE1)、電気の使用(SCOPE2)に加え、自社からみるとサプライチェーンの上流・下流にあたる領域(SCOPE3)の企業にもCO2削減や再エネ利用を求める企業が増えています。
国内外の大手製造業の記事をつぎに示します。
 Apple社の取組が有名で、トヨタ、ホンダ、日産などの大手自動車メーカーも続々と、自社も再エネ100%を追求・実現しつつ、サプライヤー企業に対してもそれを求め、賛同を受け、取り組みを促していくといった内容です。

 図_第1回_03

 

 国の法規制の取組にも目を離せないところです。2023年4月から施行予定の改正省エネ法の議論があります。従来の省エネ法はオイルショックの際に制定され、外国から輸入するエネルギーにいかに頼らず、エネルギーの使用を減らすか、ということが主眼であったのに対し、それに加え、使用するエネルギー源も非化石由来かどうかを問うていく内容となっており、エネルギー消費を減らすだけでなく、エネルギーの転換も求められることとなり、特に製造業に大きな影響があるといわれています。


図_第1回_04

 今回は、脱炭素を巡る動向について、法的なところや金融機関、企業同士の関係の中でも脱炭素を進めていかなければならなくなってきたことを述べました。
次回は、脱炭素を進めていく際に重要となる、環境価値の活用についてご紹介します。

デジタルグリッド株式会社
Decarbocracy Team
高坂 大介